総合訓練レポートなどと偉そうなタイトルを付けてはみたが、要するに海上保安庁の総合訓練の見学だ。確か抽選か先着順だったと思うが、招待のハガキが来たので行って来たのだ。港へ行くと私達の乗船する巡視船、初代「つがる」が係留されていた。総トン数3200tの大型の巡視船だ。
私達は前甲板で訓練の様子を見学するのだ。参加する艦艇は「つがる」の他、巡視船2隻、巡視挺3隻の他に警察警備挺、海上自衛隊ミサイル艦など3隻の合計9隻、それにヘリコプター3機と航空機1機の堂々たる部隊だ。

(お断り:当時私はカメラを所有していなかったので、本記事の写真は全て写真ACよりダウンロードしたものになります。撮影時期は不明です)
港から外洋に出ると艦隊訓練の視閲が始まった。これは「つがる」乗船の視閲官の前を他の艦艇や航空機が隊列を組み、行進すると言うものだ。「つがる」の右舷を整然と隊列が進んで行く。船上では乗組員達が直立不動で敬礼をしていた。上空にはヘリコプターが展開する。
ヘリが次々と「つがる」を通り過ぎ、最後に航空機がやって来た。「YS11だ!」誰かが叫んだ。そうだ、戦後初の純国産機だ。このYS11はもう引退が決定している。(平成20年当時)その勇姿を見るのも私はこれで最後かもしれない。

- こんな近くでYS11が飛行しているのを見た事がない
続いてテロ対応訓練が行われる。テロ船に見立てた巡視挺が巡視船に追いかけられる。追い詰められたテロ船のテロリスト達が拳銃を発砲し始めた。「テロリスト達が銃を乱射し初めました。巡視船はこれより正当防衛射撃を開始します」とアナウンスがあった。
次の瞬間巡視船の機関砲が火を噴いた。『ガガ、ガガガガ』勿論全て空砲だが機関砲の射撃音は迫力がある。テロ船からボン!と音が聞こえた。演出で何か火薬を使ったようだ。「テロ船は沈没しました」とのアナウンスに見学者から笑いが漏れた。

- この日の目玉の訓練。私はこの時ある事を思い出していた
次は人命救助訓練に移る。貨物船から乗組員が転落、行方不明という想定の訓練だ。先程のYS11が低空で飛行し、乗組員を発見したとのアナウンス。実際に人が海面に浮いている。
そこへ、ヘリがやって来て上空から潜水士が飛び降りた。遠くでよく見えなかったが漂流者を体に固定したようだ。そのままヘリで吊り上げ、どこかへ運んでいった。

- たまにテレビで見る光景だが、やはり実際に見ると大変な仕事だと感じる
本日最後の訓練は密輸容疑船捕捉訓練だ。密輸船役の巡視挺が、高らかにサイレンを鳴らす警察警備挺に追いかけられる。「こちらは警察警備挺いしかりである。停船を命じる、直ちに停船せよ!」拡声器の声に密輸船は停船した。直ちに警察官が密輸船に乗り込み、容疑者を拘束した。

- 訓練に参加した「いしかり」警察官達の動きは俊敏だった
こうして無事訓練は終わり、私達は最後に参加部隊からのフェアウェル(お見送り)を受けた。訓練に参加した艦艇が順番に「つがる」の前を通り過ぎる。乗組員が手を振ってくれている。私達も手を振り返す。ミサイル艦の自衛官達が函館いか躍りを披露してくれた。
港へ帰るまでの間、船縁に手をかけて海を見ながら考えてみた。町ではパトカーに乗務する警察官はよく見るが、海が管轄の海上保安管は見かける機会はない。だが、保安官は日夜、海の治安維持のために尽力してくれている。
テロ対応訓練で機関砲を発射した時、私は北朝鮮の工作船との銃撃戦を思い出していた。あの時は工作船はロケットランチャーまで発射し、巡視船は被弾して死傷者が出てもおかしくない状況だったのだ。命懸けで対応された保安官達には只々頭が下がる。
今も尖閣諸島では中国の海警局とのにらみ合いが続いている。そんな神経を張り詰める現場で任務に就いている海上保安管の皆さんに敬意を表したい。

- どうぞ十分お気を付けて任務をこなして下さい